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■ ブローチ懐中 エナメル 銀無垢 

メーカー:ARGENT?
スイス製 1890年前後?
8石 ブローチ懐中
銀無垢ケース エナメル装飾
リューズ巻上 ダボ押し時合せ



 ダボ押しシリンダー脱進機エナメル装飾銀無垢ケースのブローチ懐中です。

 留め具には青地に三日月や☆模様、時計には同じく青地に花と葉がエナメル画で鮮やかに描かれています。状態はダメージが大きく、エナメルの欠け剥がれが目立ち土台の銀が露出しています。エナメルの欠け具合を良く見るとナナメに面取りしてあり、角張った引っかかりを無くす事でこれ以上の欠けを防止する処置が施されています。

 ヒゲゼンマイの外端2周分が擦れ当たるなど状態が良くなく、頻繁に止まってしまいます。再度の微調整で稼働状態(出来れば日差精度も)を良くしていければと思っています。

 ※エナメル装飾と各技法については一番下部に。


 ブローチ状態での裏側。OH前なので風防に汚れが目立ちます。

 留め金。エナメルが剥がれて金属土台の状態が確認できます。シャンルーヴェという技法が使われています。

 OH後の顔。蕾模様のエナメル装飾。

 ベゼルのカケ部分。裏蓋の模様。OH前画像。

 裏蓋の模様。ヤマユリでしょうか。ペイントエナメルとバスタイユの技法が使われています。土台金属のギョーシェ模様がよく解ります。

 金彩で縁取られた花や葉が浮き立って見えます。この模様の透け方はデジカメでのもので実際にはもう少し濃く控えめに見えます。

 花模様の面取り部分。土台ギョーシェの上に青のエナメルがあり、その上に花が描かれているのが層になって見えるのでペイントエナメルの様子がよく解ります。

 同じく葉と茎の部分。これも青エナメルの上に描かれています。下地のギョーシェ模様が透けているのがよく解ります。

 裏蓋の内側表示。摩耗が激しい。 銀無垢HMにARGENT DORE SWISSの刻印。

  ケースのリューズ部分にも銀無垢HM。


  機械眺望。中の機械はそれなりに汚れが目立ちましたがOH後は綺麗になりました。小さいサイズの時計ながら無骨で頑丈な各部品はこの時代の機械の特徴をよく表しています。3番車・4番車・ガンギ車の石も大きめで見栄えも良く当時の高級時計としての条件を持ち合わせています。


■標記■
文字盤 特に無し

ムーブメント 15

 
裏蓋内側 EZ
0.800
ARGENT
DORE
SWISS



 文字盤側のダボ押し時合わせ機構。

 「15」?と刻印があります。

 リューズを押さえるカンヌキはワイヤー状の珍しい形。


 機械を取り出したところ。写真にすると汚れは目立ちませんね。

 分解後。

 洗浄中。

 緩急針の錆を落とします。

 地板に香箱・2番車・押さえ・角穴車・丸穴車を取付け。

 3番車・4番車・ガンギ車と押さえを取り付け

 地板側のテンプ石を取り付け。

 リューズ回り部品を取り付け、ザラ回しを確認。

 テンプ部品を組み立て。

 取り付け。動くには動きますが…。

 ヒゲの調整が再度必要です。

 取り敢えず一旦組み立ててしまいます。日ノ裏車・筒車・文字盤・針を取り付けます。

 琺瑯文字盤には黒アラビア文字とドット分表示。5分毎に金彩のピラミッドスクエアドットがあります。

洗浄と磨きで綺麗になりました。ブローチ時計という事もあり小さめ
ではありますが、やはりエナメル装飾のケースは見栄えがします。

 直径 28.2 mm 。

 重量 19.5 g。

※エナメル装飾と各技法について。

 土台となる金属表面にガラス粉や金属粉を混ぜた釉薬で焼付したもの。金属粉の種類で色分けする。金属地の腐食防止や装飾等に用いられる。琺瑯(ホーロー)・七宝焼きもこれに含まれる。懐中時計の琺瑯文字盤に欠け・ヒビ・ヘアライン等がよく見られる様に衝撃には非常に弱い。技法としてクロワゾネ(有線七宝)等がある。

 この懐中に用いられている技法は以下の3つ。

 1.ペイントエナメル 単色焼付けしたエナメルの上にさらにエナメル画を筆描き・焼付する技法。人物や植物がよく描かれる。

 2.バスタイユ 半透明な単色エナメルを通して、土台の金属に彫られたギョーシェ模様等を透かし見せる技法。光の反射によって模様の変化や立体的な奥行きが出る。

 3.シャンルーヴェ 土台の金属に彫込みを施し、彫った窪みにエナメルを流し込んで装飾する技法。彫り残した金属地の部分が模様として表面に残り、金属表面の経時的な色の変化も現れる。

 時計部分のベゼル・裏蓋には 1.ペイントエナメル 2.バスタイユ が、
 ブローチ留め金部分には 3.シャンルーヴェ2.バスタイユ が使われています。

 この懐中のエナメル装飾は欠け面積が大きいので状態が悪い部類に入るのですが、土台となる金属部分の彫りや加工が確認出来るので、エナメル装飾加工の良い見本となっています。欠けたエナメル部分に(かなり丁寧に傾斜を付けて)面取りがされている事によって、エナメルの厚さや技法の状態(特にペイントエナメルの釉薬の厚さ等)が良く解ります。100年は経っていると思われる時計ですので贅沢な教材と言えるかもしれません。


(2007.H19.06.06)




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