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Langford BRISTOL フュジー鍵捲き ■

メーカー:ランフォード?
イギリス製 1843〜1853年?
6石 フュジー鎖引き 銀無垢
鍵捲き 鍵時合わせ
表裏蓋蝶番式



 鎖引き(フュジー)の銀無垢ケース鍵捲きオープン懐中時計です。機構的にも古い時計と思うのですが恐らく1843年(時計史年表:天保14年)から10年以内かなと思います。ケースの British Silver ホールマークから年代を調べてみましたが確定的ではありません。

 鎖引きとはとんがり帽子の様な部品(フュジー・円錐均力車)に香箱からの鎖を巻き付けてトルクの変動を緩和させる機構です。捲き上げ直後の力の強い状態では円錐の上中心近くを、トルクが緩んできた状態では下外側を引っ張ります。一度は手掛けてみたいと思っていた機械でもあるのでじっくり取り組む事で気付いた事も多く、今後の資料的な意味合いを含めて画像を多めにしました。

 独特の機械音も面白く「シャカッシャカッ」という感じで、これも通常の時計の「チクタク」音をスローにした様な音です。実際に音を出しているのはテンプ・アンクル・ガンギ車の脱進列なのでフュジー独自の音という訳ではないのですが、フュジー機のテンプ形状とそのゆったりとした振れ方によるものだと思います。

  ネジを捲き上げるには通常の時計とは逆に左捲きで行います。捲き上げる時の手応えも「カチカチ」というよりは「シャリシャリ」という感じでフュジー機独特の感触です。古い機構という事もあり精度に関してはあまり期待はしていませんでしたが、それほど誤差もなく平置きで日差1分以内程度に納まっています。


■外観■

 非常にクラシック感のある英国式銀無垢フュジー鍵捲き懐中時計です。

 提げ輪部分。リューズはありません。ボタンを押すとラッチが解けて裏蓋を開ける事が出来ます。

 裏蓋はプレーンです。表面は全体的に年代相応の丸みが出ています。手に心地良く馴染みます。

 表面拡大。鱗模様は彫りが浅くなってはいますがしっかり残っています。

蓋を押し上げるバネが無いので、ボタンを押しながら蓋を開きます。

 中蓋は固定です。献辞が彫ってあります。Jack Hrlrs(?) Bristol 1922

ホールマーク■

 裏蓋内側のホールマーク。40097。4つのホールマークが押されています。

 この猫顔?のマークは「Assay mark in London」のものかと思います

この左獅子?と先の猫顔、右のアルファベットの3つで年代を推定します。

 これはアルファベットの「H」に相当する様です。推定が正しければこの3つで1843年となるのですが…。

 HW JW のマーク。これもどこか場所や年代を特定するマークでしょうか。

 一番下に小さく T のマーク。確定的な詳細は不明です。

 風防を開きます。蓋の3時位置を爪で押し上げます。時合わせは鍵を使って直接針の真を回します。

 秒針の下のツメを押し込んでラッチを外し、機械をめくり上げます。

 緩急針は通常の時計と同じ様に合わせる事が出来ます。横から鎖やフュジーを見る事が出来ます。

 中蓋の内側にも同じホールマークがあります。重複しますが、それぞれ拡大します。

猫顔マーク。ヒゲがあるのが判ります。

横獅子。凹凸がはっきりしています。

「H」マークは減りが少なく意匠が判りやすい。

HW JW のマークはかなり減っています。


 機械全景。1枚プレートのマット地の中央に凝った装飾の施されたテンプが配置されておりその存在を引き立たせています。文字盤やプレートは楔(くさび)止めされています。古い機構ではありますが機械そのものの状態は良く、テンプは大きくゆったりと、力強く振れています。

 Langford BRISTOL 40097 の標記があります。このNo.はケースのNo.と一致します。 



 機械の中心で一際目を引く輝きのテンプ受石です。大きめで平べったい形状でカットが施されています。ダイヤモンドエンドストーン?かどうかは不明です。


■標記■
文字盤 特に無し

ムーブメント Langford
BRISTOL
40097
16
0
1


 
裏蓋 ホールマーク4つ
40097

裏蓋内側 ホールマーク4つ
40097




分解■

 分解手順を模索しながら進めていきます。機械をケースから外すネジとかはあるのかどうか?文字盤を外してみます。


 文字盤下。筒車・日ノ裏車。見えている大きな歯車は3番車です。こちら側からアームで止めてあります。左上にある黒い片回車とコハゼは香箱からの真を留めてあります。

 文字盤裏。裏側にも釉薬が塗ってあります。錆防止の為でしょうか。楔留めの足3本とも折れずに残っています。マジック?で何か書いてありますね。

 16 0 1 のナンバー。シリアルとは別の補助番号かと思います。工程上の作業場等をサーチするためのもの?

 40097。



 3番車留めのアームの、こんな所から4番車(秒針)が出てます。黒いバネは機械をケースに止めるラッチ押さえです。

 香箱からの片回車(かたまわりしゃ)と留めツメ。ツメはバネ等での押しつけがありません。

 機械の取り出し方が判らず迷った結果、蝶番のピンを打ち出しました。すぐ外れてくれました。

 機械だけにすると横から見やすくなりました。左の香箱から右の円錐車までクサリが伸びています。


 このクサリは香箱の上から下方向に向かって巻いてあります。円錐車への高さとシンクロさせないと外れやすくなるのでこの巻き方向は重要です。

 改めてテンプを見てみます。



 ヒゲゼンマイはテンプ押さえではなく、このヒゲ持ちに楔で留められています。組立後での微調整には向いていると思います。

 押さえを外す。やはり別々になっています。

 ヒゲは割と丈夫な金属で出来ています。

 受石と緩急針を分解。



 テンプの本体を外す。バイメタルではなく切り込みやチラネジ等もありませんが、大きめの円弧を持っています。

 振り石はルビーではなく金属の様です。


 先ほどの片回車。トルクの無い状態にしてツメを外してみます。

 所謂「角穴車」とは違います。フュジー機械独特の部品でしょうか。

 香箱の押さえを外す。これはネジ留めです。


 プレートは楔(クサビ)留めです(この画像はテンプを外す前のもの)

 ここにも楔があります。


 全部で4箇所の楔留めです。また同じ留め場所に戻す様にします。

 プレートを外します。香箱と円錐車、他の輪列が見えてきます。

 円錐車からクサリが外れない様に、この黒い棒でクサリの暴れを押さえています。暴れ止め棒?

 サビで汚れています。円錐車の受け穴です。


 テンプ受石。スライド差込型になっています。

 40097のナンバー。

 フュジー機構の各部品の配置です。円錐車にクサリを巻くと香箱内のバネでトルクが掛かり、円錐車から2番車、3番車、4番車(秒針)、ガンギ車、アンクルへと駆動が伝わります。クサリは巻く時には香箱側では下から上に向かって解けていき、円錐車側でも同じく下から上へ向かって巻かれていきます。円錐車には自転車のチェーン受けの様にギザギザがついていません。従ってクサリが水平になっていないと外れてしまいます。組立て時での香箱へのクサリの巻き方向は重要です。また円錐車への鎖の巻き方向を見て判るように、普段カギでネジを捲く時には左巻(反時計回り)に捲いていきます。右には回らない様になっています。


 カギ歯をストッパーで止めています。ここから上だけが回転する様になっています。巻上時のトルク減を緩和する仕組みかと思います。

 地板から各部品を外す。



 4番車の真が曲がっていました。

 修整します。

 香箱と円錐車。

 香箱側のチェーン端。爪で引っ掛けています。

 円錐車も下から上へ巻かれていきます。

 バー型のアンクル。

 アンクル側面。

 石は受けのカーブに合わせて加工されています。

 ガンギ車。15本の歯が尖っています。

 厚みもあるので丈夫に出来ています。

 洗浄。

 細かい黒粉が出ましたが汚れは軽微でした。

 磨き粉の様な白粉のこびり付き。

 綺麗に落とします。

■組み立て■

 香箱と円錐車の位置と、クサリの爪を確認します。

 地板に2番車を乗せて

 香箱・円錐車を乗せます。この段階ではまだクサリは付けません。

 止め歯にストッパーを合わせます。


 各輪列を設置。


 アンクルとガンギ車の位置を確認。アンクルは剣の方を少し上にしておきます。

 プレートのテンプ受石を

 スライドさせて取り付けます。

 プレートを取り付け。全部品の真を入れながら

 アンクル剣先も穴に入れます。

 各部品の位置を確認後クサビを入れて固定します。

 クサリを横から通して

 香箱押さえを取り付け。

 円錐車に爪(平べったい方)を引っ掛けます。

 香箱に爪(厚い方)を引っ掛けます。


 片回車の方からカギを使って香箱を回し、クサリを巻いていきます。こうすると作業がやりやすいです。

 上から下方向へ向かって巻いていきます。



 片回車を付け、1歯か2歯分くらいのトルクをかけてストッパーを咬ませます。これでクサリが固定出来ます。この位置が「捲きネジ解放状態」になります。

 続いてテンプを取り付けます。

 ヒゲ持ち棒を地板に取り付け。

 テンプ部品を

 組み立てます。

 押さえを取り付け。元気に動き出しました!フュジー機独特のゆったりとした動きです。


 さらに少しづつフル捲きまで持っていきます。

 文字盤側。

 日ノ裏車・筒車を設置。

 文字盤を置いて

 クサビでしっかり止めます。

 蝶番のピンをはめてケースへ戻します。

 長針が角穴付けなので短針を合わせながら取り付けます。

 普段の時間合わせも文字盤側から行います。針に直接触れない様に真だけ回します。

 ラウンド型のガラス風防とローマ時表示の組み合わせがいかにも古風な英国式といった感じです。

 3時位置と5時半位置にヒビがあり、他にも若干の薄いヘアラインがあります。

 提げ輪部分にもホールマークがあります。

 場所的にも減りが強いです。

 普段の捲き上げ操作。ゆっくりと左に捲きます。

 「Langford」のプレート標記。

初めてのフュジー懐中でしたので時間をかけてじっくり取り組みました。
試行錯誤する中で新しい発見もあり、今後の参考にもなってくれると思い
ます。古い英国懐中は古物感抜群な魅力に溢れており、アメリカ懐中・
スイス懐中と並んでこれからも扱っていきたいと思います。


 直径 48.85 mm。

 重量 91.7 g。

サイズ・重量共に存在感のある時計です。


(2008.H20.03.30)


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