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ELGIN Car Watch 8日巻

メーカー:エルジン
アメリカ製 1927年
自動車取付時計
7石 METAL+真鍮?
リューズ捲き リューズ引き時合わせ
表裏ネジ留め
裏蓋ネジコミ式



 運転席の計器パネルに取り付けるタイプのエルジン機械式自動車時計です。1927年(時計史年表:昭和2年)製です。エルジンではこのタイプの時計を1921〜1937の16年間製造しています。ムーブメントのサイズは37s(普通は大きいものでも18s)となっています。本体の実測は77mmあります。反射を抑える梨地漆黒の文字盤にペンキで引いた様な白色の針とアラビア時表示で運転中でも視認性は高くなっています。秒針が12時位置に、6時位置からリューズ用のパイプが長く伸びています。このリューズは普通の時計と同じくネジ捲きと時合わせ操作が可能です。

 当時のアメリカでは自動車が急速に普及した時期でもあり、この前年1926にはルート66が指定される等ハイウエイのインフラ整備も進んでいました。車載時計の需要もあり、Westclox、Waltham社でも同様のカーウオッチが製造され、キャデラック、リンカーン、ビュイック等のオールドモビルに使用されました。

 当時の車の性能や道路事情では振動や温度変化など時計にとって厳しい環境であった為、とにかく頑強な造りになっています。自動車フレーム合金の様なケースに分厚いプレートで剛性を高め、時計自体に重量を持たせています。また肉厚の歯車とシンプルな脱進機で故障しにくくしています。さらに強く安定したトルクを得る為大型スプリングを内蔵した2つの香箱(ダブルバレル)を実装し、8日巻きとなっています。

 ケースの状態は自動車の塗装やペンキにまみれていましたが、時計自体の状態は非常に良好です。ガラスやアクリルもオリジナルで、文字盤にも大きな痛みはありません。針の付け根の塗料が若干剥がれているくらいです。廃車時に取り外されて保管されていたものと思います。
 

■外観■

 反射防止黒文字盤に白色の針に時表示。運転中でも見やすい時計です。

 いかにもオールド計器といったデザイン。当時の車のコンソール画像があれば見てみたいです。

 9時〜12時位置に明かり取り用の半透明のアクリル板があります。

 横から明かりを当ててみました。こんな風に見えていたのかも。

 裏蓋側です。

 裏蓋はネジコミ式です。

 裏蓋内側も十字に補強されています。

Stewart スチュワート?ケースメーカーでしょうか。

 P14436 。

 AUG のスタンプ。8月?


 機械全景。分厚いプレートによる重量と剛性でガッチリとガードされています。2つの香箱からの強いトルクを受ける為でもあります。テンプやアンクル、ガンギと4番車(秒針)については普通の懐中部品(16Sくらい?)サイズのものが使われています。 



 しっかりとケースに留められています。


■標記■
文字盤 ELGIN

ムーブメント ELGIN NATIONAL
WATCH CO.
MADE IN
U.S.A.
30145862
8 DAYS

 
表蓋 STWART
P14436
AUG



分解・洗浄・修理■

 当初の状態。ケース、リューズパイプの汚れが顕著です。

 裏側。ケースの脇と蓋部分はいかにも廃車部品といった状態です。

 塗装が剥がれてボロボロです。埃っぽいし、これが時計じゃなかったら見向きもしない様な状態です。

 脇の採光部も白ずんだりペンキの様な跡も。さわると手が汚れます。

 リューズ先。これペンキでしょうね。

 枠を外すのは力技でした。

 分厚いガラスです。当時のオリジナル。枠が固かったおかげで変にいじられずにいたのかも。

 長ーいリューズ真。コンソールの下から操作する為のものでしょう。

 機械を取り出す。ずっしりと重いです。

 厚く頑丈な金属文字盤。3足留めです。

 ダブルバレルと丸穴車が見えます。


 この巨大な2つの香箱!この時計の最大の特徴であるデカく分厚いダブルバレルです。

 分解後。ケースとワクが目立ちます。

 リューズパイプの中。真っ黒です。

 埃を取る程度のつもりがつい熱中してしまい、2時間ほど徹底的に磨く。「キタナイ塗装は全部剥がす!」

 綺麗になった(地金出た)。色が全然違うぞ…。塗装は残した方が良かったのか?スッキリしたから良し。

 時計部品の洗浄。

 特にキチ車は汚れがきつい。置いただけで…

■組み立て■

 綺麗になったキチ車ツヅミ車と押さえ(丸穴車の受けになります)。

 キチ車、ツヅミ車を設置。あれ?と思った人は流石!この2つの部品は配置が上下逆になっています。

 押さえを取り付け。順番に部品を置いていきます。

 デカ香箱を2つ設置。

 丸穴車と2番車を設置。

 2番車を挟むように角穴車2つを設置。

 2つの香箱から同時にトルクを受ける歯車(香箱中間車)。全てがデカくて丈夫です。(洗浄前画像)

 香箱中間車を設置。他の歯車と違ってアームのないベタ歯車です。


 時計の下に伸びているリューズを巻くと、画像の一番上にある丸穴車が回ります。この丸穴車は両側下にある2つの角穴車を回し、香箱の中のメインスプリングを捲き上げてトルクを貯めていきます。その2つのトルクは香箱本体から香箱中間車に伝わり合流して、ベタ歯から2番車→3番車へと伝えられていきます。輪列の真は太く長く作られており、肉厚のプレートにしっかりと組み込まれています。不安定な状態の車載時計を少しでも安定稼働させる為の機構として工夫されている機械です。


 受け板の裏側。香箱中間車と2つの角穴車を受ける凹みがあります。

 角穴車逆転防止のコハゼ。大きなトルクを受ける為、ツメが4つもあります。

 受け板設置。ネジは4本。上の2本は丸穴車とリューズ受けをまとめて留める為、長いネジになってます。

 ガンギ車設置。車載時計仕様の大きな香箱や2番車に比べると小さいサイズになっています。

 ガンギ受け板を取り付け。ザラ回しで輪列が回っています。

 アンクル部品もシンプルで通常サイズです。これも安定度を増すための工夫です。

 アンクル取り付け。

 テンプ部品。チラネジ付きバイメタル切りテンプ。

 巻き上げヒゲ・ダブルローラー。小さめのチラネジ(ミーンタイムスクリュー?)。

 テンプ取り付け。元気に動き出しました!



 テンプ振り石の横まで切れ目があるのでダブルローラーとアンクルの咬み合う動きを見ることができました。写真はアンクルの剣先がこちらを向いている瞬間です。形が解るでしょうか。ピンと露出・タイミングがうまく合ってくれた1枚です。


 文字盤側。小鉄車が外側にあるので中心の筒車まで一列に並んでいます。

 文字盤を取り付け。


 ケースへ填め込み。

 針を取り付け。

 ガラス、半透明アクリル、反射枠を取り付け。

 表枠を取り付け。ネジ止めです。

この時計が装備してある様子を見てみたいのですが1920〜30年代の
アメリカ車コンソール写真までとなると検索が難しく見る事が出来ま
せん。でもさすがにオールドアメ車、スタイルや色がカッコいいですね。


 直径 77.69 mm。

 重量 438.7 g。実感では鉄アレイに近いです。

 全長 140.00 mm。

 19セイコーとの比較。

  8Days 計測 平置き姿勢
3月23日(日) pm5:00 フル捲きスタート
3月24日(月) pm6:30 稼働中
3月25日(火) pm5:15 稼働中
3月26日(水) pm3:30 稼働中
3月27日(木) pm3:00 稼働中
3月28日(金) pm4:45 稼働中
3月29日(土) pm3:00 稼働中
3月30日(日) pm9:30 稼働中
3月31日(月) pm5:00 稼働中
4月01日(火) am4:40 ストップ
合計 8日と11時間40分



 この様なモノを懐中として持ち歩く人はいないでしょうが、インパクトは絶大です。(色んな意味で)大いに注目されるでしょう。イザという時には武器にもなりそう。

(2008.H20.04.10)


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