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Tavannes 象嵌 900銀無垢 ハンターケース ■

メーカー:タバン
1910年前後? スイス製 10石
900銀無垢ハンターケース
リューズ捲き レバー引き時合わせ
表裏中蓋蝶番式



 タバン社の900銀無垢ハンターケース懐中です。製造年は不明ですが、レバーセット仕様や、日本人好みの凝った外装が採用されていることなどから明治後期の1910年時計史年表:明治43年)前後のものかと思います(あくまで推測)。

 タバンの銀懐中は当HPでも何度か取り上げました。この個体もトレードマークの犬印こそありませんが、他のタバンと同じ様に白瀬戸に黒ローマ時表示&スペード針という落ち着いた顔を持っています。

 ケースに施された象嵌はかなり凝っていて、丸と四葉の模様がケース全面にあり、銀無垢の地も厚く頑丈なものです。その分蝶番に負担が掛かってしまった様で、若干緩くなっています(開閉に問題はありません)。またサイド面や提環にも細工がしてあります。

 その象嵌細工ですが、保存状態が悪かったためか、残念ながらほぼ全滅の状態でした。黒の部分全面にヒビが入り、下層の銀表面も白っぽくなっていました(酸化?)。その清掃と復活の試行錯誤の様子を、「特記」として最下部に記しました。


■ 外観 ■

タバンのレバーセット銀ハンターです

表蓋。マーク周辺の黒残りについては後述

裏蓋。2枚貝のような頑丈なケース

裏蓋オープン。中蓋にシュオーブ社の刻印

中蓋の蝶番に若干のヘタリあり

タバンらしい機械です


 機械全景。ガンギ・4番・3番各車の押さえ穴石が泡を3つ繋げたようなポコポコとしたデザインがタバンらしいです。機械を分厚い金属環が取り囲んでいます。ケースのみならず、機械もかなりのガード体制です。

 象嵌以外にも、全体的に状態が良くありませんでした。ほぼ不動で汚れもありました。メインスプリングも切れていました。

 このタイプの懐中は商館と同様日本独自色が強く、しかも象嵌ケースとなると数も少ないので何とかならんかな、と。せめて稼働状態までもってけないかな、と。時計の機能としては、平置きで日差+30秒前後まで追い込めました。テンプの振りも大きく、元々高いポテンシャルを秘めているのだとわかります。さすがタバン。


 刻印 ■

900銀ケースの反射を受ける梨地機械

中蓋裏。900銀マークが2カ所に。

シュオブ社(下記に説明)の刻印

「MODELE DEPOSE」

 洗浄・組立 ■

ガラス風防の内側がこんな汚れに。雪結晶模様?結露のホコリがカビたのでしょうか?

メインスプリングも切れてました。右は幸運にもストックがあったジャストサイズ。よかった。

分解後

洗浄中。念入りに。

地板にキチ車・香箱・2番車を乗せる

3番・4番・ガンギ車と各押さえを取り付け

角穴車とラッチとバネ

押さえで固定

巻き上げ・時合わせ切り替え部品取り付け

レバーを引くと時合わせ位置に

アンクル取り付け

テンプ部品を組立て取付け

元気に動きだしました!大きな振りです。

文字盤取り付け

機械ガードを

ガチャンと取り付け、頑丈!

タバンウオッチ社の文字盤表示

レバーセットも完動


 TAVANNES-16J 犬印 060828 の下部説明文
 タバン社は、シュオーブ社を親会社とするグループの内の一社で、装飾を主な担当としていました。グループには他にシーマ社、サンドス社がありました。
 シュオーブ社は日本へも数多く輸出し、日露戦争(1904)後の好景気の中、庶民層にも懐中が浸透していきました。中でもこの犬印タバンは流通量が多く認知度も高いです。

■ サイズ・重量 ■

巾 46.5 o

重さ 76.7 g


■ 特記:象嵌ケースの清掃 ■

 今までにない長期戦となった(半年間コツコツと)この作業ですが、やはりこのタイプの懐中が大好きなんですね…。象嵌ってこんな朽ち果て方をするのかーというのもわかって参考になります。


元の状態がこれ!一見すると全面に漆黒の象嵌が残っていますが…

ほぼ全部がこのようなヒビだらけでした。手に持つだけで破片がポロポロと落ちてきます

このへんはほとんど砂と化してます

マークの中にもヒビが

この状態でベンジンに浸けるとどうなるか?洗うまでもなくドンドン滑落してきます

マークの象嵌も同様。


模様部分も、ヒビのある所は全て、

浮き上がるようにして剥落します

剥離部分拡大!地銀表面が腐食したようになって象嵌部分を押し上げています

ケースのサイド面も剥落します


ネック部分の象嵌もですね


剥落後のケース表面。全面が酸化したように白っぽくなってます。でも銀なら黒くなるハズ?

さて磨いてみましょう。この凹凸のある模様にうまく光沢が戻れば良いのですが

時間はかかりますが、なんとか銀艶が出てきました。凹凸も強調されていい感じです

比較のため右半分のみ磨く。差は歴然ですね

横位置での艶加減を確認

全ての象嵌が滑落した訳ではなく、マーク周辺は残りました。これはしっかりと接着しています。

全面剥がしてしまえば銀で統一されますが、なるべく元の状態も残すべきと考えました。

全面を磨く。凹凸がありましたのでムラになるかと思いましたが、逆に模様が強調されていい感じの浮柄になりました。



(2010.H22.06.12)


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