■注油■
確認 注油は単なるアブラサシではなく、OH後の時計の状態を左右する重要な行程で、時計師としての力と技が最も発揮される作業です。使用オイル・箇所・量・手順などは全て経験が生かされます。具体的には油差し先へのオイルの付け方と量・注油時の油差しの進入角度・受け石への油の乗せ方とその石の戻し方・注油後の状態の優劣と確認方法など細かい所でのノウハウの塊で、熟練した時計師の総合的な手捌きは迅速さ正確さにおいて神業の連続と言えるほど。じっくり取り組む事。流れ出すほど多く差したりしない。油の横漏れやはみ出しに注意。余計な油がテンプに付いたりすると大幅な狂いが生じてしまう。
使用オイル
油つぼ・油差し
色々な分類法があるようですが、ここでは以下の様に分類しました。
また油つぼ・油差しの色も決めておきます。
注油箇所 使用オイル
アンクル爪石 メービス941
メービス922
ベルジョンオイルLE
ルージン1
輪列・テンプのホゾ
穴石・受け石
自動巻ローター
他小物
メービス9010(SYNT-A-LUBE)
ベルジョンオイルBA
ゼンマイ
香箱内
時送り装置
リューズ
(グリース系)
メービス8200
メービス8300
ベルジョン2845A

その他専用油としてあればよいもの
   2番車専用…メービス9020(SYNT-A-V-LUBE)
   クロノグラフ専用…ルシン
組立前注油 組立前に、香箱蓋内側・香箱の外側可動部・2番車の稼動部(時計で一番ヘタる所)に注油しておく。
■組立■
確認 各部品の正しい位置や組立手順など。特に歯車やギヤの上下・ネジの位置を間違えない事。各部位ごとに稼働状態を確認しながら進めていく。
オシドリ・リューズ止めネジの取付 止めネジは輪列押さえの穴に通る部品のため予め取り付けておく。
ホルダーに固定 地板を輪列側を上にしてホルダーに固定する。
ガンギ車・4番車と押さえの取付 特にガンギ車の上下向きに注意。4番車の真を曲げない事。押さえの取付時にはホゾが穴石に入っているか確認の事。念のためネジを甘締めしてから歯車が傾いていないか、スムーズに回転するか、噛み合いは正常か見てから本締めする。
各輪列車の配置 香箱・3番車・2番車の順に置いていく。
秒針押さえレバーの配置 秒針押さえレバーを置く。ここではだいたいの位置に。
輪列押さえの取付 まず香箱の真、3番車・2番車のホゾが受けに入ったかルーペで確認し、いったんホルダーから外す。指で軽く押さえを持ちながら、ムーブメント裏側のリューズ溝から秒針押さえレバーの凸をピンセットでつまんで上下させ、受けのスキマに落ち着かせる。秒針押さえレバーを挟んだままネジを締めない様に注意。
角穴車の取付・注油 取付前に注油。可動部に。
丸穴車の取付・注油 取付前に注油。下のワッシャの両側と丸穴車内側の下と側の溝に。
キチ車・ツヅミ車・リューズの取付 キチ車・リューズ真にグリース。リューズを少し巻いて各輪列がスムーズに回るか・異音がしないか確認。
ムーブを裏返す ムーブメントを裏返してホルダーに固定する。
筒カナを入れる 2番車の真に。曲がりピンセットでパチンと。力がいるので注意。
小鉄車・中間小鉄車・日ノ裏車を入れる・注油 各ギヤは上下を確認。注油は可動部に。
カンヌキ・カンヌキバネを入れる・注油 バネを飛ばさない様に注意して取り付ける。カンヌキをツヅミ車の凹み部分に入れる。注油は可動部に。
裏押さえを入れる オシドリともかみ合わせる。
リューズ稼働の確認 ここでリューズの稼働を確認する。使用者にとっては時計の唯一の操作部分なので調整状態の判断材料にされる重要なところ。上下動の際の安定度や手応え・秒針レバーの動き・時送り装置の可動状態と手応え・変な抵抗・引っ掛かり・異音などがないか。分解前と同等かそれより良くなっていればOK。
アンクルと押さえの取付 アンクル真が穴石に入ったかルーペで確認。アンクル穴石には注油しない。
テンプ受けに緩急針・石・ネジ2個を取り付ける 細かい作業なのでしっかり安定させて行う事。
テンプの上下穴石に注油 注油後テンプを一度差し込んで油を中に安定させる。専用の注油装置を使うとやりやすく確実。注油後状態をルーペで確認する。光にかざすと見やすい。穴石の穴に対して同心円状に丸く見えればOK。
ヒゲ持ちを穴へ入れる ヒゲ持ちを最後まで差し込み、ネジを締める。ヒゲの平行位置に注意。歪みや擦れはないか。ヒゲ棒2本の間にヒゲが通っているか確認。
テンプ+テンプ受けの取付 ネジを少し巻いておいて、アンクルフォークを手前に置き、テンプを手前側から右に回しながら入れると、振り石がアンクルフォークの剣先の間に入りやすい。動き始めたらネジを巻き足してテンプの振れ・アンクルの動き・各輪列の動きを確認する。
■仕上注油
輪列2・3・4・ガンギ車 裏表に2回ずつさす。穴の中で小さく盛り上がる様に。
アンクル爪へ注油 裏の穴から、入りヅメのツメの先端の平らな部分に薄い厚みが見える程度にさす。横にもれない様に。ガンギ車を2・3回指ですらしながらゆっくり回す。再度アンクル入りヅメに同じように注油。再度ガンギ車をまわす。すると、ガンギ車の衝撃面(歯の上)のみに油が行き渡る。ここは注油行程の中でもキモ中のキモ。
■最終組立
筒車・針座(三角ワッシャ)を入れる 噛み合いを確認。可動部に注油。
文字版の取付 ムーブ側面のネジを締める。テンプを触らないよう注意。
ムーブメントをケースに入れる リューズを抜き、ケースに納め、またリューズを戻す。止めネジを締めて固定する。
秒針・時針・分針の順に取付ける リューズを引いて4番車をストップさせる。12時00分00秒に取付ける。剣押さえで平行にぶつからない様に。リューズを引いて針を回して確認する。
ガラス蓋・裏蓋を閉める 両手で挟む様にして力を入れパチンと閉める。